国立競技場 第2回|バトンに託したもの

近代建築物

木の香りと、汗と、友情と


号砲が鳴る、その一瞬まで

「位置について」

スタジアム全体が、息を止めたように静かになる。
8万人収容の競技場とは思えないほど、音が澄んでいた。

「新国立競技場って、音が反響しすぎないんだよ」

紗季の言葉を思い出す。
観客の声援を熱として感じさせながら、
選手の集中を乱さない音響設計。


建築は、走りを邪魔しない

号砲。
第1走者・健斗が、完璧なスタートを切る。

赤いタータントラックは、
世界陸連認証の高性能舗装。
反発力が強く、スピードを殺さない。

「うわ……伸びるな、あの走り」

観客席から、どよめきが起こる。
でも、不思議と耳障りじゃない。

建築が、音を整理している。


バトンは、言葉以上の約束

陸へ。
一瞬、目が合う。

そこに言葉はなかった。
でも、今まで積み重ねてきた時間が、すべて詰まっていた。

翔太へ。
彼は去年、補欠だった。

「俺、ここに立ってるんだな……」

走りながら、彼はきっとそう思ったはずだ。

バトンが、僕に来る。
その重さは、信頼そのものだった。

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